ー第二電電創業者の贈与税申告漏れ報道から考える総則6項ー
先日、第二電電(現KDDI)の創業者に関する贈与税の申告漏れが報じられました。報道によれば、財産評価の方法が争点の一つとなり、国税当局は財産評価基本通達総則6項を適用して課税(更生処分)を行ったとされています。
財産評価基本通達185は、取引相場のない株式の評価に用いる「1株当たりの純資産価額」の算定方法を定め、特に課税時期前3年以内に取得・新築した土地等や家屋等については通常の取引価額相当額で評価することを求める通達です。
具体的にはこの創業者(贈与者)が会社を3社設立してそれぞれに不動産を取得させ、3年超経過後子供4人に対して法人株を贈与した案件です。
ー総則6項とは何かー
財産評価基本通達では、土地や非上場株式などの評価方法が細かく定められています。
しかし、通達通りに評価すると著しく課税の公平を欠く結果となる場合には、総則6項により「通常の評価方法によらない評価」が認められています。
この規定は、税務署が自由に適用できるものではありません。
最高裁判所は令和4年4月19日の判決(いわゆる札幌事件)において、「相続税を少なくしたい」という意図(租税負担軽減の意図)に加えて、財産評価基本通達による評価をそのまま適用することが課税の公平を著しく害すると認められる特別な事情がある場合に限り、総則6項の適用が認められるとの考えを示しました。
ー「節税」と「租税負担軽減を意図した行為」は同じではないー
総則6項が話題になると、「節税をすると総則6項が適用させるのではないか」と心配される方がいます。しかしそれは誤解です。
税法が予定している制度を利用することは、適法な相続税対策であり、税理士も積極的に提案しています。
一方で問題となるのは、形式的には通達に従っていても、通達が予定していない方法で著しく税負担を軽減し、その結果として課税の公平が損なわれるようなケースです。
つまり、「税金を少なくしたい」という目的だけでは総則6項は適用されません。
その目的に加え、財産評価の仕組みを利用して著しく不公平な結果が生じているかどうかが重要になります。
ー「うまい話」は長続きしないー
相続税対策の相談では、「このスキームを使えば大丈夫ですか。」といった質問を受けることがあります。
しかし、長年税務に携わっていると感じるのは、"一発逆転”を狙う対策ほどリスクが高いということです。
税法や判例は、課税の公平という観点から絶えず見直されており、極端な税負担軽減を狙う手法は、後になって否認されたり、法改正の対象となったりすることが少なくありません。
特に最近の裁判事例では、大手金融機関の提案(スキーム)により、否認されるケースが多いようなので注意が必要です。
ー王道の相続税対策こそ最も強いー
結局のところ、相続税対策に近道はありません。
●毎年の暦年贈与や制度に沿った生前贈与を計画的に行う。
●財産の内容を定期的に見直す。
●不動産や法人の承継を早めに検討する。
●生命保険を活用して納税資金を準備する。
●遺言書や家族信託なども含め、家族全体で承継を考える。
こうした地道な積み重ねが、結果として最も安全で、最も効果の高い相続税対策になります。
ーおわりにー
税法は、適法な節税を否定しているわけではありません。しかし、課税の公平を著しく損なうような租税負担軽減については、総則6項という「最後の安全弁」が用意されています。
だからこそ、相続税対策に必要なのは、「抜け道」を探すことではありません。
税法の趣旨に沿った制度を理解し、時間を味方につけながら、地味でも着実な対策を積み重ねること。
これこそが、将来の税務リスクを最小限に抑え、ご家族に安心を残す最善の方法ではないでしょうか。
国税庁が令和8年7月13日に更新した「税務行政におけるオンラインツール」とは、税務署と納税者・税理士が、メールやWeb会議などを利用して、より効率的にやり取りを行うための仕組みです。
税務調査そのものをオンラインで行う制度ではなく、「必要な場面でデジタルツールを活用する」という位置付けのようです。
このオンラインツールの利用開始には、納税者・税理士の同意が必要となり、打ち合わせや資料のやり取りをオンラインで行うことにより、効率化を図ることができるようです。
詳しくはこちら 税務行政におけるオンラインツールの利用について|国税庁
被相続人の相続財産に充分な金融資産があれば納税資金の心配はいりませんが、不動産が大半を占め金融資産が不足している場合には納税資金の確保が必要となります。
そこで生命保険の加入で納税資金の確保ができる場合があります。
前提としては加入が可能な年齢と一定の健康状態を満たせば死亡保険金で相続税をカバーできます。
例えば、相続財産が2億円で配偶者と子1人の場合、「1,800万円」の死亡保険金を確保し、その死亡保険金を子が受取り、そのまま相続税に充当すれば、納税は完了し、その他の財産は無償で残ります。
しかし、配偶者の相続についての対策は講じられていませんので、配偶者が一次相続で取得した財産に対しても生命保険に加入しておく必要があります。
また、相続税の納税資金を生命保険だけで準備することは理論的には可能ですが、被保険者の年齢が高いことからも保険料が相当な金額になります。保険料負担に耐えうる限度という視点から判定して、課税価格が概ね3億円以下の場合には生命保険金だけで納税資金の準備が可能と考えられます。
令和8年分の路線価が、国税庁より令和8年7月1日11時に公表される予定です。
路線価は相続税や贈与税の土地評価の基準となる指標であり、不動産を所有されている方にとっては毎年注目すべき情報です。
路線価とは、道路の面する標準的な宅地1㎡あたりの評価額のことで、相続税や贈与税の土地評価に利用されます。毎年1月1日時点の地価を基準として算定され、公示地価のおおむね80%程度を目安に設定されています。
令和8年路線価は上昇傾向が続く中、多くの地域(都市部や観光地)で上昇することが予測されます。
土地の評価額が上昇すると、相続税評価額の総額も上昇するため結果として相続税額が増加する可能性があります。特に不動産が相続財産の大半を占める場合には、早めの対策が将来の税負担軽減につながります。
相続税の申告期限は、被相続人が亡くなったことを知った日の翌日から10か月以内です。
しかし、遺産分割協議がまとまらなかったり、財産の把握が遅れて「期限までに申告できなかった」という事例も少なくありません。
特に「申告しなくても大丈夫だと思っていた」というケースでも、税務署から指摘を受けると無申告加算税と延滞税が発生します。
先月もお客様から期限後申告でも小規模宅地等の特例を使って申告したい旨の相談を受けました。
結論から申し上げますと、一定の要件を満たせば期限後でも小規模宅地等の特例は受けられますが、今回のお客様の場合は、遺産分割協議がまとまっておらず既に相続開始後4年以上経過しているため適用はできない旨の返答をしました。
申告が必要かな?と思われる方はお早めに税理士に相談してみてください。
令和8年度税制改正大網では「貸付用不動産の評価方法の見直し」が決まりました。
高齢者の駆け込み不動産投資や小口化不動産投資を封じたもので、相続開始・贈与前5年以内取得貸付
不動産や小口化貸付用不動産が対象です。
令和9年1月1日以後の相続開始・贈与から適用されます。
具体的には9月に通達が公表されるかと思われます。
基本的には、不動産は早期取得・長期保有が原則ですね。
また、資産を法人所有にすることで、個人の評価ルールの直撃を避けることが可能となります。
株式評価において「純資産価額方式」ではなく「類似業種比準方式」の適用を目指すことにより、
株価は大きく圧縮できますが、これについても国税庁HPにて「取引相場のない株式の評価に関する有識者
会議」の開催について、類似業種比準価額を適用する割合が高い規模の大きな会社ほど相対的に低く算定さ
れることを会計検査院の検査報告において指摘されていることから、令和9年度税制改正において何らかの
措置が講じられる可能性が高くなっています。
新一万円札(五千円札、千円札)が今年7月3日に発行されるとのこと。
「一身(いっしん)にして二生(にしょう)、一人(いちにん)にして両身(りょうしん)」
という表現は、福沢諭吉が『文明論之概略』の中で日本人は江戸時代までの伝統を生きていると同時に、
明治以降の西洋化をも生きている。
この二つの生を同時に生きていること自体を客観視したものだ。
「一人で二つの人生を生きることができる時、人はその二つを比較できる。比較ができるということは、
知識がより正確になることだ。そんなことは、西洋人にもできないことだ。
なぜなら西洋人は、自分たちの文明しか知らないのだから」と言っている。
また、福沢諭吉は漢文も読み、蘭文にも習熟した。福沢の一身二生とは、今でいう二刀流なのである。
そのオランダ語の翻訳で生計を立てていたが、開国後、横浜へ行ってみると、
そこではオランダ語ではなく英語が使われていた。
オランダ語の知識は役に立たないと認識すると、翌日から英語の先生を探し始め、英語の猛勉強を始める
のである。
その後、幕府の通訳としてアメリカに渡れたのは、福沢は英語に強いと評判になっていたからだ。
切り替えの早さ、思い切りのよさ、見事と言わざるを得ない。
諭吉様と言われていた一万円札、お疲れ様でした。
(参考文献:大嶋 仁 「1日10分の哲学」新潮新書)
明けましておめでとうございます。今年もよろしくお願いします。
新年早々、石川・能登の大地震や羽田での飛行機事故、小倉商店街の火災等、暗いニュースが
多かったのですが、株価は続伸しているようで明るい話題も欲しいところですね。
さて、今年の1月9日より日本初の税務AI相談チャットサービス「税務相談ロボット」の提供が
開始されたとの報道がありました。
月額1万円で50回まで質問可能とのこと、企業経理担当者や税理士向けのサービスのようです。
人工知能(AI)は専門分野での相性が良いと聞いたことがあります。
膨大なデータから答えを導きやすいようですが、
さてその答えの責任は誰がとるのか?
税理士法に抵触しないのか?
今のところ明確ではありませんが、実務をやっていると結構グレーゾーンの税務相談を受けることが
多いため、その企業の状況などを細かくヒアリングしながら回答しますが、
AIはこのグレーゾーンの質問にどのような回答をするか興味があるところです。