事務所通信 Web版

2026年5月号

税務:令和8年度税制改正のポイント③ 食事支給に係る所得税非課税限度額の見直し

企業が従業員等へ食事を支給したとき、原則は現物給与として課税されます。ただし、①従業員等が食事価額の50%以上を負担していること②企業負担額(=食事価額-従業員等が負担している金額)が月額3,500円以下(消費税額を除く)であること――をいずれも満たしていれば、従業員等の給与として課税されません。

長引く物価高をふまえ、令和8年度税制改正により、食事支給に係る所得税非課税限度額(=企業負担額の上限)が「月額3,500円以下」から「月額7,500円以下」に引き上げられます(所得税基本通達の改正をふまえ、令和8年4月1日以後に支給する食事について適用予定)。

食事支給は、定期昇給やベースアップに続く「第3の賃上げ」ともいわれます。改正のポイントをおさえ、自社の福利厚生の充実に役立てましょう。



会計:モヤモヤ解消! 領収書にまつわる素朴なギモン

新年度となり、新入社員を迎えた企業も多いことでしょう。このタイミングであらためて確認しておきたいのが、「領収書」にまつわる基本的なルールです。

〇領収書はあくまで「支払いがあった事実」を証明する書類です。経費として認められるかどうかについては、「事業に関係があること」「誰と、何の目的で支出したか」等によります。領収書には、支出目的や人数等を追記する習慣をつけましょう。

〇領収書が発行されない場合は、「支払証明書」等の書類を作成すると良いでしょう。支払証明書等には「支払日・支払先・金額・内容」を正確に記載します。

〇メール添付のPDF等、原本がデータ(電子)の領収書等を受け取った場合は、電子帳簿保存法により、紙に出力せずデータのまま保存するのが原則です。

〇消費税の計算(仕入税額控除)に必要な項目が記載された書類のことをインボイス(適格請求書)といいます。原則として、領収書に①インボイス発行事業者登録番号②適用税率(8%・10%)③税率ごとに区分した消費税額等――が追記されていればインボイスに該当します。「インボイスに該当しない領収書」の場合、会社が支払う消費税が多くなります。

〇公私混同や不正利用を防ぐためにも、領収書に関する社内ルールの整備は必要です。例えば、「1万円以上の支払いは事前に上司による承認が必要」「領収書の精算は〇日以内」などと、金額や精算日に基準を定めると良いでしょう。




労務:あらためてチェックしてみよう!「給与明細」のきほん

給与には、毎月一定額が支給される基本給や通勤手当などのほか、時間外手当のように毎月変動するものがあります。これらを基礎として、控除する社会保険料や税金の額が決まります。

 〇時間外手当:勤務状況(日数・時間)を把握した上で、以下の算式で計算します。

時間外手当=(基準内賃金合計÷所定労働時間)×割増率×時間外労働時間

 〇非課税通勤手当:税法上、通勤手段ごとに定められた非課税限度額の範囲内の支給をいい、公共交通機関の場合は、定期代等の実費が相当します。マイカー通勤の場合は、通勤距離に応じて金額が定められています。

 〇社会保険料:社会保険料のうち、健康保険料・介護保険料・厚生年金保険料は、毎月の報酬(基本給や通勤手当、時間外手当等を含むすべての支給額/税引き前)を基に算出されます。

 〇所得税:課税支給額から社会保険料を控除した「課税対象額」に対して、源泉徴収税額表(月額表)を参照し、扶養家族の人数に応じて源泉徴収すべき所得税額が決まります。

 〇住民税:前年の所得をもとに税額が決まります(社員の住所地の市区町村が賦課)。




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「山口雅文税理士事務所 事務所通信」を送らせていただきます。



2026年4月号

税務:令和8年度税制改正のポイント② 「少額減価償却資産」に係る損金算入の特例の見直し

中小企業者等の場合、取得価額30万円未満の減価償却資産(少額減価償却資産)を年間合計300万円まで、全額その期に費用計上できる「中小企業者等の少額減価償却資産の特例」が適用できます。

令和8年度税制改正において、本特例対象の少額減価償却資産の取得価額が、「30万円未満」から「40万円未満」に引き上げられます(4月1日から適用予定)。加えて、適用期限が令和11年3月31日まで3年延長されます。ただし、年間合計額は「300万円まで」で現行と変わりません。また、本特例を適用できるのは「常時使用する従業員数400人以下」の中小企業者等とされ、対象企業が縮小されます(現行:従業員数500人以下)。

この特例で処理した少額減価償却資産は、償却資産の申告をする必要があります。なお、令和8年度税制改正により、償却資産に係る免税点が「150万円」から「180万円」に引き上げられます(令和9年度以後の年度分の固定資産税について適用)。


経営:中小企業のための情報セキュリティ管理のイロハ 

記憶に新しい、大手飲料メーカーや大手通販サイトが受けたサイバー攻撃。「うちは中小企業だから関係ない」と思い込んでいませんか? 情報漏洩等の事故が起きた場合、自社だけでなく取引先や顧客まで被害を拡大させてしまいます。しかし、「何から始めればいいか分からない」という企業も多いことでしょう。その際は、次の5か条を守るところから始めてみましょう。

 〇OSやソフトウェアは常に最新の状態にしよう!

 〇ウイルス対策ソフトを導入しよう!

 〇パスワードを強化しよう!

 〇共有設定を見直そう!

 〇脅威や攻撃の手口を知ろう!

自社の情報セキュリティ管理について、いま一度見直してみましょう。



労務:知っておきたい「子ども・子育て支援金制度」 

子育て支援の財源確保のための新しい仕組みとして、令和8年4月分の医療保険料から「子ども・子育て支援金制度」が始まります。「子ども・子育て支援金」は、加入している医療保険制度ごとに支援金額が決められます。被用者保険(健康保険組合、協会けんぽ等)の場合、標準報酬月額に支援金率(令和8年度は0.23%)を掛けた金額を従業員と事業主が折半します。従業員1人ひとりの標準報酬月額に応じて支援金額が異なるため、支援金額の算定や徴収などの事務負担が増えることになります。また、給与計算システムの保険料率等の設定変更も必要です。

なお、法令上の義務ではありませんが、従業員へ同制度の理解や周知を促すためにも、給与明細への保険料の内訳表示(支援金額の追加)をすることが望ましいといえます。


法務:住所等変更登記の義務化が始まります 

近年、所有者等が不明な土地が全国で増えており、社会問題となっています。この問題解決のため、令和8年4月1日から、不動産の所有者は、住所や氏名・名称の変更日から2年以内の変更登記が義務付けられます。正当な理由なく、その申請を怠ったときは、5万円以下の過料の適用対象となります。義務化の施行日より前に住所等の変更があった場合についても、義務化の対象となります。この場合、令和10年3月31日までに変更登記をする必要があります。

なお、不動産の所有者が必要な情報を事前に法務局へ登録しておくことで、住所や氏名等に変更があったときに法務局が職権で変更登記をしてくれる「スマート変更登記」というサービスがあります。



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2026年3月号

会計:決算をサクッとキチンと終わらせる!──決算時は「資産・負債の残高確定」のタイミング

3月は決算を迎える企業が多い月です。決算手続きでは、正確な当期利益を計算するために、決算日時点の資産(現金預金、売掛金、棚卸資産、固定資産等)や負債(買掛金、借入金、未払金等)を確認して、残高を確定させる必要があります。「資産の部」「負債の部」の項目について、主なポイントを確認しておきましょう。

(1)「資産の部」のポイント

○現金預金:決算日時点の帳簿残高と実際の残高の一致を確認

○売掛金:総勘定元帳の「売掛金」と補助元帳(得意先別明細)を照合

○棚卸資産:実地棚卸しを行い、実際の数量と帳簿上の数量を照合

○仮払金:決算日までに必ず精算

○固定資産:現物と固定資産台帳を照合

(2)「負債の部」のポイント

○買掛金:総勘定元帳の「買掛金」と補助元帳(仕入先別明細)を照合

○借入金・役員借入金:帳簿残高との照合と短期・長期に区分

○未払金・未払費用:支払未了のものを計上


税務:令和8年度税制改正のポイント① インボイス制度「経過措置」の内容が変わります 

令和5年10月に導入された消費税インボイス制度。その定着に向け、事業者の事務負担に配慮して設けられた2つの経過措置の内容が、令和8年度税制改正により変わります。

(1)「2割特例」から「3割特例」へ――個人事業者に限り適用可能に

「2割特例」の対象期間は令和8年9月30日までの日を含む課税期間とされていました。「2割特例」の終了後も、インボイス制度を機に免税事業者からインボイス発行事業者となった個人事業者(これまで「2割特例」の対象となっている個人事業者も含む)に限り、消費税の納税額を売上税額の「3割」とすることができる措置が講じられます(令和9年分および令和10年分)。

(2)「80%控除」から「70%控除」へ――段階的に引き下げ、措置期間も2年延長

インボイスを発行できない免税事業者等からの課税仕入れに係る経過措置(仕入税額相当額の一定割合を仕入税額とみなして控除できる措置)については、控除できる期間が2年延長されるとともに、控除可能割合も見直されます(令和8年10月から70%、令和10年10月から50%、令和12年10月から令和13年9月末まで30%)。


労務:いまこそ考えてみましょう 「シニア人材の雇用」

全事業者に義務付けられている「65歳までの雇用確保」。現在「70歳までの就業機会の確保」は努力義務ですが、人手不足の昨今、シニア人材の雇用はますます一般化していくとみられます。今後を見据えて、①就業規則の見直し②シニア人材の賃金・労働条件の見直し③継続雇用の意思確認④シニア人材の処遇・支援体制の見直し――等を行い、シニア人材により活躍してもらうための就業環境をいまから整えておきましょう。なお、令和8年4月は、シニア人材を雇用する会社にとって重要な制度改正が控えています。概要をおさえておきましょう。

○「在職老齢年金制度」の見直し:賃金と年金の合計額に応じて、老齢厚生年金の一部または全額がカット(支給停止)となる「在職老齢年金制度」。老齢厚生年金が減額されるライン(基準額)が、現行の「51万円」から「62万円」へと引き上げられます。

○高年齢労働者の労災防止対策が努力義務化:労働安全衛生法の改正により、高年齢労働者(60歳以上)の特性を考慮した業務の割り振り等を行うなどして、高年齢労働者の労災防止対策を講じることが全事業者の努力義務となります。


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