事務所通信 Web版

2025年11月号

会計:経理の「?」を「!」に キャッシュレス決済の記帳、どうしてる?

コロナ禍を経て、急速に広まったキャッシュレス決済。クレジットカード、電子マネー(Suica等)、二次元コード(PayPay等)など、その手段も多様化しています。キャッシュレス決済は、その決済方法により、大まかに①後払い式②プリペイド式──に分かれますが、いずれも「発生主義」で記帳することがポイントとなります。

 ①後払い式(クレジットカード決済):「取引時」「入金時・引落時」に仕訳が必要

 ②プリペイド式(電子マネー、コード決済):「チャージ時」「取引時」に仕訳が必要

 なお、プリペイド式の電子マネー等は気軽に利用できるため、取引先等との飲食や備品を購入する時などに、プライベートのアカウントを使用してしまう場合があります。そのため、電子マネー等を使用した時は、必ず領収書をもらう、取引履歴をダウンロードして保存しておくなど、お金の流れが分かる証拠をきちんと残しておきましょう。

 そもそも、プライベートのクレジットカード・電子マネー等の利用は、公私混同を招くおそれがあります。そのため、法人カードや法人用電子マネーを使うようにする、業務用携帯のアプリ・アカウントから決済する──など、事業用とプライベートのお金の流れを、きっちり分けられるような仕組みやルールをつくることが大切です。


税務:年末調整直前! おさらい!「 年収の壁」

今年、何かと話題の「年収の壁」。働き方が変化した方も多いと思われます。それに伴う年収の変化は12月以後に行う年末調整にも大きく関係するため、今一度おさらいしておきましょう。

 「年収の壁」には①税金にかかわる「壁」②社会保険にかかわる「壁」――の2つがあります。

①税金にかかわる「壁」――納税者本人の所得税(住民税)に影響するものと、その配偶者や親等の税負担に影響するものとがあります。

 ○「110万円の壁」:納税者本人の住民税負担に影響

 ○「150万円の壁」「160万円の壁」「188万円の壁」「201万円の壁」:納税者の配偶者や親等の所得税負担に影響

②社会保険にかかわる「壁」――社会保険料の負担が生じる「壁」をいいます。

 ○「106万円の壁」:一定の条件のもと、健康保険・厚生年金保険の保険料負担が発生

 ○「130万円の壁」:原則として国民健康保険・国民年金の保険料負担が発生



経営:できていますか? 売掛金の管理

「売上は伸びているのに、資金がギリギリ……」という経験はありませんか?考えられる要因の1つに、売掛金の回収遅延があります。

 売掛金の残高は常に確認し、あわせて「変わったこと」がないか考えてみましょう。例えば、売上の伸び以上に売掛金が増加している、入金が遅れている、売掛金が長期間未回収となっている──等に該当する得意先がある場合には、売掛金の回収方法を検討することが必要になります。まずは営業担当者が訪問して得意先の状況や支払遅延の理由を確認。最終的には、社長自身が得意先に出向いて自分の目で現場を確認し、先方の社長と「膝詰め」で話し合うことも重要です。

 売掛金が回収できなければ、資金不足を招き、借入れが必要になることも。売掛金の管理は、単なる経理業務ではなく、自社の健全経営を支える大切な業務です。全社員で意識しましょう。



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2025年10月号

経営:今期の決算に向けての「総仕上げ」を(実践編3)

社長の「今期やりたいこと」を数字に落とし込んだものが、経営計画です。経営計画は毎月の実績と照らし合わせてこそ、その真価を発揮します。期末まであと2か月のところまできたら、着地点を見据えながら今期の「総仕上げ」をしましょう。

 ○まずは、上期の振り返りで検討した改善策の効果と今期の着地点を、数字を基に検証してみましょう。FXシリーズ「365日変動損益計算書」から、当期・前年同期・当期計画の数字を比較・確認できます。

 ○黒字で着地しそうな場合は、納税額とともに決算対策も確認しておきましょう。決算対策においては、今期・翌期の売上や利益、従業員のモチベーションのアップにつながるような「前向きな決算対策」(減価償却資産の購入、決算賞与の支給など)を意識することが重要です。過度な節税は利益を縮小させ、資金繰りが苦しくなるなど、かえって悪手になることがあるので注意しましょう。


会計:その「資産」、本当に「お金になる」もの? 「投資その他の資産」の中身をチェックしてみよう!

貸借対照表(B/S)の「資産の部」に表示される固定資産のうち、長期的な保有を目的とした資産は「投資その他の資産」に区分されます。具体的には、投資有価証券、保険積立金、リゾート会員権・ゴルフ会員権などが該当します。

 これらの資産は、すぐに現金化するのが難しい(=流動性が低い)という特徴があるため、いざというときに現金化できず、資金繰りが苦しくなってしまうおそれがあります。また、「含み損」が発生していたり、事業承継に影響を及ぼしたりすることもあります。

 「投資その他の資産」に区分される資産は頻繁に取引されるものではないため、見落としがちなところでもあります。「凝り固まった」B/Sになっていないか、年1~2回は、自社の状況をチェックしましょう。


法務:2026年1月1日施行「取適法(とりてきほう)」 中小企業も注意と対応が必要です

中小企業を含めたすべての事業者が、適切な価格転嫁等ができる取引環境の整備・定着等を目的として、「下請法(下請代金支払遅延等防止法)」が改正。「中小受託取引適正化法:取適法(製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律)」に名称が変わります。「取適法」は、2026年1月1日から施行されます。

 取適法では、適用対象となる取引の範囲を、①取引の内容と、②資本金基準または従業員基準――から定めています。今回の改正でいずれも見直しがなされたことにより、今後、中小企業は業務を委託する側と受託する側、どちらの立場にもなる可能性がありますので、注意が必要です。違反行為があった場合の罰則規定(50万円以下の罰金等)も定められています。

 今のうちから取適法の概要をつかむとともに、①取適法対象となる取引・取引先の確認②必要な書面等の準備③従業員への周知――などの対応をしておきましょう。



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2025年9月号

税務:それって「福利厚生費」?

「福利厚生費」といえば、一般に、従業員やその家族のために企業が任意で設ける福利厚生のための費用(法定外福利費)を指すことが多くなっています。具体的には、社宅の提供、社内レクリエーション(社員旅行など)、食事代の補助、慶弔見舞金――等が該当します。

税務上、「福利厚生費」として認められるためには、次の要件を満たす必要があります。

 ①全従業員が対象であること

 ②現金や換金性の高いものの支給ではないこと

 ③社会通念上妥当な金額であること

これらの要件を満たしていない場合、給与として取り扱われる可能性がありますので注意が必要です。


会計:「自己資本」を意識して会社を変えよう

貸借対照表(B/S)の「純資産の部」は、普段の経営であまり意識することは少ないかもしれませんが、会社の健全性・安定性が分かるため定期的な確認が必要です。

 B/Sの「純資産の部」には、「創業から今までの、会社のあゆみ」が数字として表れています。いわば会社の「年輪」のようなもの。その積み重ねた年輪が、「自己資本」です。自己資本は、同じ貸方の「負債の部」で示されている他人資本(借入金等)とは異なり、返済が不要な資金で、主に「資本金」と「利益剰余金」とで構成されます。

 ○資本金:会社の資産の基礎となるものです。会社を設立した時の、株主による金銭出資と現物出資で構成されます。

 ○利益剰余金:創業から現在までの「税引後の当期利益」の累計額を表します。「その会社の利益を稼ぎ出す力の累積」と見ることもできます。

 総資本に占める自己資本の割合を示したものが「自己資本比率」です。自己資本比率が高いことは、他人資本(借入金等)に頼らずに事業を運営できていることを表します。予期せぬ経営環境の変化にも対応できることから、突然の倒産リスクもぐっと低くなります。また、生み出した利益(資金)を設備投資など、新たなチャレンジに活用することも可能です。

 中小企業の場合、自己資本比率を高めていくには、黒字決算を実現し、税金を納めて、利益剰余金を積み上げていくこと──が王道です。


トピック:考えてみませんか? 自社をとりまく「リスク」とその対策

会社経営には、さまざまなリスクがつきもの。特に、労働災害等の「ヒト」、資産の故障・盗難等の「モノ」、取引先の倒産や損害賠償の支払い等の「カネ」に関わるリスクについては、自社に起こり得るケースとその対策をあらかじめ考えておくことが重要です。自社の実態を考慮しながら、どのような危機が起こり得るかを想定してみましょう。

 「自社の実態の把握」には、日々の記帳と月次決算、そして会計事務所による月次巡回監査が基礎となります。例えば、固定資産台帳を見れば、いま、どんな資産をどれだけ会社が所有しているか、それらが消失等したときどんなリスクが想定されるか――といったことを考えるヒントになります。また、決算書を見れば、長期滞留している売掛金がどれだけあるか(=回収できていない売掛金がどれだけあるか)、つまり、業績が厳しくなってしまった取引先がどれだけあるか──など、取引先の倒産リスクを想定するベースとなります。このように、会計データは会社のリスクを考えるときの貴重な情報源となるのです。

 自社が抱えるリスクについて、一度洗い出してみませんか。



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